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2019年10月9日
なでしこアクション代表 山本優美子

ニューヨークタイムズは映画「主戦場」 をどう報じたか

ニューヨークタイムズに日本支局発の映画「主戦場」の記事が掲載された。インターネット版は2019年9月18日付でタイトル「戦時中の日本による女性の奴隷化を探求した映画監督が提訴されるA Filmmaker Explored Japanʼs Wartime Enslavement of Women. Now Heʼs Being Sued.)」。紙面は9月19日付ニューヨーク版第8面でタイトル「日本による性奴隷化の映画で米国人が提訴される(American Sued Over Film on Sexual Enslavement by Japan)」だ。 ( 記事日本語訳はこちら )

この記事が出る前の9月3日、私はニューヨークタイムズ日本支局長リッチ素子記者の取材を受けた。写真撮影も依頼されたが写真はお断りした。結局私の発言は記事の中で使われなかったが、記事を書いたリッチ素子記者と直接話し、日本支局スタッフと接することができたのは、ニューヨークタイムズ関係者の考え方を知る上で良い機会であった。

■     「主戦場」全米大学上映ツアー開始と同時の記事

記事がニューヨーク版紙面となった9月19日は「主戦場」の監督ミキ・デザキ(出崎幹根)氏が「米国大学上映ツアー」を開始しした日だ。出崎氏もこの記事をツイッターで「素晴らしい記事(Great NY Times article)」 と喜んでいる。

ツアーは10月11日までのおよそ3週間、米国東海岸の北部バーモント州からジョージア州まで南下し、大陸を横断して西海岸まで、ブラウンやエール、UCLAのような有名大学を15か所回った。出崎氏のツイッターでは各大学での上映会が成功した様子が投稿されている。コネクチカット大学では、反日で有名な歴史学者アレックス・ダデン教授も参加したとのこと。UCLAではグレンデールとサンフランシスコで慰安婦像建立に協力した市民団体関係者も参加すると宣伝されていた。

記事と上映ツアー開始が同日とは、偶然とは思えないタイミングの良さだ。日本支局によると日本発の記事であっても、掲載日は本部が決めるので掲載されて初めて日本支局が知るそうだ。

全米15もの有名大学を3週間で回る手配の良さにも感心する。

出崎氏自身は一年半前に日本で大学院を卒業したばかりの36歳の一日系米国人男性だ。特段影響力のある人物とは思えない。出崎氏と映画を支援する勢力が日本だけでなく米国内にもいるのではないだろうか。

■    慰安婦問題  記者が理解できない三点

慰安婦は性奴隷ではないと主張する私は映画「主戦場」でレイシスト(民族差別主義者)扱いされている。これまでも米国訪問の際に「山本優美子レイシスト、ナショナリスト出ていけ」のデモに遭ったり、誹謗中傷のチラシを配布されたりして不愉快な思いを何度もしてきた。

今回取材の際、リッチ記者に「またメディアに酷いことを書かれて嫌な思いをすると思うと今日の取材も躊躇した」旨を伝えると、そんなことはないと驚いた様子だった。リッチ記者も日本支局の女性スタッフも非常に感じの良い方たちで、取材は言葉を一つ一つ確認しながら丁寧に進められた。

そんなリッチ記者と話す中で、慰安婦問題についてどう説明しても理解してもらえない点が改めて分かった。慰安婦制度と河野談話と教科書だ。

リッチ記者は、慰安婦制度について当時と現在の社会や人権状況が違うということは分かっても「軍用に慰安所があること自体があってはならない。女性への人権侵害」というという考え方だ。

記事では1993年の謝罪と表現されている河野談話は、リッチ記者は日本軍の強制性の証拠だという。確かに外務省のホームページの河野談話の英文日本語よりも更に酷い印象を与えるものだ。たとえ談話が韓国との政治的妥協であっても、2014年に日本政府が河野談話を検証しても、2016年に日本政府代表が国連人権委員会で強制連行、20万人、性奴隷を否定する発言をしても、1993年から四半世紀以上にわたって広められた河野談話は今も強制連行の証明として使われる。海外メディアの慰安婦問題記事では必ずと言っていいほど引用されている。

教科書については、リッチ記者は「米国では奴隷制度を教科書に載せている。なぜ日本では慰安婦について教えないのか」という。慰安婦制度と奴隷制度は全く違うものだし、子供たちに教えるべき重要な歴史は他にたくさんある、と説明しても「歴史の悪い面も子供には隠さず教えるべきだ」と納得できない様子だった。

■     ニューヨークタイムズらしい 日本は植民地で残虐行為

日本の保守層からは反日的メディアと呼ばれるニューヨークタイムズだが、今回の記事も日本は韓国を植民地にして残虐行為をしたことが前提となっている。

記事には「朝鮮半島を植民地として占領した日本」、「慰安婦の処遇を含めて、そこで行った虐待行為」、「国家の名誉を損なうべきではないとして、これまでドイツがホロコーストへの償いを通して行ったような贖罪を避けてきた」とある。

残念ながらこれらは海外メディアのお決まりの表現でもある。

■   影響力のある保守主義者が脅し?

記事では「出崎が映画の中でインタビューしている保守主義者たちは、日本政府の最高位の層に影響力を持つグループに属している」として、「日本の子供たちの教育のあり方や、どのような芸術作品を鑑賞させるかなどの政策の形成に係っているほか、恐らくは日本の外交政策の主なあり方、特に韓国との間の外交政策についても影響力を持っていることが注目される」とする。あまりにも過大評価だ。我々側には著名なジャーナリストや評論家もいるが、残念ながらこれほどの影響力はない。

その「保守主義者たちの感情を逆なでする」ものとして「愛知国際芸術祭は、朝鮮人慰安婦を象徴する像に対するテロの脅しによって中止に追い込まれた」との例を挙げる。その後に出崎氏の言葉「映画に対する提訴は、国家主義者たちが、いかに自らに抵抗する者たちを黙らせようとしているか」、「この映画の最重要テーマは、なぜ彼らが歴史を消したいのか?である」と続く。

慰安婦像展示へのテロの脅しと映画への抗議や提訴が両方とも保守主義者の圧力、という印象を与える書き方だ。日本の保守、国家主義者、は権力を振りかざして暴力的というイメージ。これも海外メディアのお決まりの表現だ。

出崎氏は自分がまるで権力者に圧力を受けた被害者のように語っているが、我々が「歴史を消したい」などとは彼の勝手な思い込みだ。我々が訴えたのは出崎氏の詐欺的行為と人権侵害が理由だ。被害者は我々の方である。

■     ニューヨークタイムズも認めた 慰安婦20万人証拠なし

記事は評価できる点もある。取材の時リッチ記者は、映画では結局「慰安婦20万人」は誰も証明できなかった、と話していた。確かにその通りで、映画では慰安婦の「強制連行、性奴隷、20万」の三点について左派の学者はだらだらと話してはいるが、結局は誰も証明出来ていない。

今回の記事ではその点をこのように書いてある。「主流派の専門家たちは、日本軍が力づくで婦女子を誘拐したことを示す直接的証拠がないこと(保守主義者たちは、この点を衝く)についても隠さず打ち明け、慰安婦とされた婦女子の人数の見積りにも大きな開きが存在することについても率直に語った」

■  映画は学術研究倫理違反の卒業プロジェクト

この記事をよく読むと大学関係者、研究者であれば気づくことがある。映画はそもそも卒業研究であったこと、その研究対象者が提訴したということ。つまり学術研究倫理に反した行為があった可能性が高いことだ。そして指導教授は教え子の研究協力者に対して配慮している様子が全くないこと、だ。

記事で出崎氏は「卒業テーマの研究のためにドキュメンタリー作品の制作を思い立った」とし、原告側は「映画があくまで出崎の卒業テーマ作品であって商業映画ではないことを前提としてインタビューを受けることに同意した」ことを明らかにしている。

また、「映画にも登場する、出崎の指導教官で東京・上智大学で教鞭を取る比較政治学者・中野晃一」は、「原告らは映画の解釈が自分たちにとって完全に気に入るものではなかったので、提訴をするための理由を捜していると思うと述べている」と書いている。学術研究倫理を守る指導教官であれば、教え子の研究協力者に対して配慮を欠いたこのような発言ができるはずはない。

日本では文科省の指導で多くの大学で学術研究倫理規定が設けられている。もちろん上智大学にも研究対象者・協力者の人権を擁護する学術研究倫理規定がある。研究対象者は自分が納得できなければ研究参加協力を撤回できるし、データの破棄を求めることも出来る。

米国の大学では研究倫理規定が日本よりずっと厳しいと聞く。研究者は大変な苦労をして倫理規定に則って研究に取り組んでいるのだ。研究倫理に問題のある映像が大学で上映されてよいのだろうか。

■     「表現の自由、言論の自由への侵害」へのすり替え

出崎氏は、9月23日付ロシア国際テレビネットワークの記事で「日本の戦時女性奴隷化についての映画『主戦場』に対する差し止め訴訟は、言論の自由、表現の自由への攻撃、議論の口封じ」と語っている。彼にとっては自分の権利だけが大切なようである。

我々が止む無く提訴するに至ったのは、彼の卒業研究に協力した我々研究対象者の訴えに出崎氏が聞く耳を持たなかったからだ。

詐欺的手法を用いて、学術研究倫理を守らずに制作し、研究対象者の人権を蔑ろにする映画は「表現の自由」でも「言論の自由」でもない。

2019年11月14日 なでしこアクションサイトより転載

10月1日文科大臣への報告文書から

8 文部科学省への報告

 学術は真理を探究するための厳粛な手段であって、人を攻撃するための道具ではありません。そうであるがゆえに、学術には高度の倫理的規範が課されると同時に、その信用が社会的に担保されるのです。今回、研究不正の実行者たち(中野晃一、出崎幹根)がやったことは、人を攻撃するための手段として学術的信用を利用するという、最も悪質なものでした。
ことは、日本の学術共同体全体の信用にかかわる問題です。もし仮に、この研究不正が放免されれば、わが国の学術共同体全体の信用毀損として、日本のアカデミズムは深刻な事態に陥らざるを得ないでしょう。この事件によって、日本の学術研究は危機にさらされているのです。
研究実施者および研究責任者において、研究協力者への攻撃意図が明白であり、権利回復を完全には期待できず、また、研究機関である上智大学の対応も自浄能力に疑いを持たざるを得ないものであるため、本日、やむなく私たちは文部科学大臣に事態を報告することとした次第です。(以上)

10月25日開催の集会に是非お越しください

10月1日文科大臣宛報告より

7 上智大学当局による研究不正調査の懈怠と進捗

被害者の藤岡信勝、藤木俊一、山本優美子の3名は、4月27日、不正な研究が行われた上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科の委員長あてに問題の発生した経緯を説明するとともに、インタビューに訪れた3名の元大学院生に関する質問状を送りました。すると、デヴィッド・ワンク委員長から、出崎本人からの書面による同意がない限り対応しないとの返信があり、回答を拒否されました。つまり、門前払いです。
 そこで、6月21日、藤岡信勝は、山本優美子の協力のもと、「告発窓口」として大学が指定している監査室に電話をし、窓口担当者に30分ほど説明をしました。そして、同学の責任者の立場にある学長または研究倫理担当の副学長に説明のための面会のアポを求めました。ところが、当方への返事は、学長・副学長との連絡がつかない、連絡はついたが検討中である、面会するかどうかも検討中だ、いつまでに結論を出すかは答えられない、などの極めて不誠実な、際限のない引き延ばしでした。
 上智大学当局において、事件に誠実に向き合う姿勢が全く見られないために、私たち5名はやむなく、出崎幹根および中野晃一の研究不正に関する「通告書」(8月28日付け)を内容証明郵便として代理人経由で、上智学院佐久間勤理事長と上智大学嘩道佳明学長あてに送付しました。すると、事件の最初の告発から実に4か月以上も経過した9月2日、告発者側は、大学が調査委員会を組織する予定であるとの連絡を電話にて受けました。9月4日には、「上智大学における研究活動上の不正行為に係る調査の手続きに関する内規」の規定に従って、大学から9月3日付けの調査委員名簿が送られてきました。しかし、5名で組織される調査委員のうち、研究者は2名であり、驚くべきことに、その両名ともが、明らかに研究上・運動上、中野の人脈に属する人物でした。私たちは、三度、裏切られたのです。当然、私たちは、詳細な忌避理由を記した異議申立書を提出しました(9月11日)。
その後、9月25日付けで、①「通告書」および「異議申立書」を踏まえ、②調査対象事項を改めて検討すべく、③調査委員を一部交代させたうえで、④予備調査の実施を予定している旨の「ご連絡」が学長からありました。しかし、①「通告書」の発出主体は5名であるにもかかわらず藤岡信勝のみを告発者として位置づけ、②交替する調査委員が誰なのかも明示されず、③予備調査の役割は本調査を実施するかしないかの判断材料を集めるものであるため、本調査を取りやめにする意図と可能性も否定し得ないものです。
私たちは四度裏切られるわけにはいきません。そこで、今度は「公開質問状並びに異議申立書」として、本日付けで文書を発出しました。

【追加】10月1日付けで学長宛に発送した文書は次のとおりです。これに対する返信は10月13日現在、まだ届いておりません。ただし、指定した「7日後まで」の時点にあたる10月8日付けで、学長から回答をもう少しのばしてほしいとの文書が届いています。


2019年(令和元年)10月1日
上智大学
学長 嘩道 佳明  殿

藤岡 信勝
112-0005東京都文京区水道2丁目6-3
新しい歴史教科書をつくる会気付

質問状並びに異議申立書

(1)9月27日夕刻、貴信「ご連絡」を落手いたしました。貴信によれば、①「通告書」(8月28日付け)と「異議申立書」(9月11日付け)等を踏まえて、「調査対象事項をあらためて検討」する、②「調査委員会委員について、一部交代する」、とのことで、いずれも、小生の「異議申立書」の主張が認められたものと理解いたしました。
 しかし、その一方、どうしても納得できず再び異議を唱えざるを得ない部分と、十分理解出来ない点や質問させていただきたい点などがございます。そこで、この文書をしたためることといたしました。この文書到着の日から起算して7日以内に誠実なご回答を求めます。

(2)貴信の内容は次のような5つの箇条書きにまとめることが出来ます。
①9月11日付けの異議申立書と8月28日付けの通告書等をふまえ
②調査対象事項を改めて検討すべく、予備調査の実施を予定している
③予備調査を行うにあたっては、通告書記載の事情の詳細等についてもお話をうかがいたいのでご協力をお願いしたい
④これに伴い調査委員会委員について、一部交代することとしている
⑤DEZAKI NORMAN M氏及び中野晃一氏より、告発者及び告発内容の開示の要請があったので、「貴殿」[藤岡信勝-引用者注]より告発があったことと、通告書記載の告発内容の概要を両名に通知する

(3)ここからわかる、貴学の新たな方針は次の5点です。
ア)初めて内容証明郵便で送った「通告書」(前便では無視されていたもの)を調査の対象としたこと
イ)「本調査」と言っていたのを「予備調査」に変えたこと
ウ)初めて聞き取りをするとしたこと
エ)被告発者に「中野晃一」が初めて入ったこと(通告書を対象に据えた結果である)
オ)調査委員の一部交代をすることとしていること(中野人脈で固めた人事を撤回した)

(4)さてそこで、異議を申し立てなければならない第一は、退任・就任する委員の人数と実名が伏せられている問題です。
 今回の貴信では、交代する人数(当然2人以上であるべきだが)は何人か?、誰が交代して委員をやめるのか?、その代わりに就任した委員は誰か?、が全てブラックボックスになっています。前便では5名の委員の実名が記され、従って当方においても調査が可能で異議を申し立てるにいたったのですが、今回は交代した委員の実名がありません。実名がないから、この交代が本当にこの問題に取り組む貴学の姿勢の改善を意味するのか、それとも事態を糊塗するものなのか、判断のしようがありません。ありていに言えば、中野人脈の人物を代わりに据えることはいくらでもできるからです。ですから、必ず実名を示し、それについて前便と同様、7日間の判断の猶予を与えていただくことを要求します。
 なお、当方には調査を引き延ばす意図は全くありません。すでに告発から2か月半が経ち、この間、不当な映画の上映によって、毎日毎日、私は侮辱され人権を侵害され続けているのですから、一刻も早く調査を熱望する立場にあるのです。そこで、上記の「?」を付けた3つの点につき、必ずお答え願いたい。

(5)第二の異議は、告発者を「藤岡信勝」一人にしぼっていることです。これは極めて不当で、厳重に抗議します。今回、新たに告発内容として位置づけた「通告書」の発信主体は、代理人弁護士ではなく、内容証明郵便の文書のとりまとめと発信業務を弁護士に依頼した、ケント・ギルバート、トニー・マラーノ、藤岡信勝、藤木俊一、山本優美子の被害者5名です。「ご連絡」の文面では、その中から藤岡のみを恣意的に選び出して告発者として出崎・中野両氏に知らせ、他の4名は無視しています。これはまったく認められません。告発者は上記5名であると訂正していただきたい。

(6)第三の異議は、貴信には、調査の日時や調査方法などについての具体的な事実が少しも書かれていません。調査方法について、直ちに当方の代理人弁護士を含めた被害者たちとの協議の場を用意していただくことを要求します。

(7)以下は、不明な点についての質問です。
 a)被告発者の2人に、告発者及び告発内容の開示の要請があったので、通知するとしています。「通知」は、「上智大学における研究活動上の不正行為に係る調査の手続きに関する内規」の第何条に基づくものなのですか? 普通、被告発者に対する「通知」は告発者側からのヒアリングの後になされるのが常識と考えられますが、このような措置をとられたのはなぜですか?
b)それならば、当方も貴学より回答を拒否されている事項がありますので、開示願いたいので1点だけ質問します。大学院生出崎幹根の修士課程入学時点は何年何月ですか?
 c)9月3日付けの貴信では、「本調査」を実施する、と書かれていました。ところが、今回の貴信では、予備調査を行い、それに基づいて本調査を行うかどうかを決定する、と読める内容となっています。前回は予備調査を省略し本調査の実施を決めたと解釈できますが、今回、それを変更して予備調査から始めることに変えたのはなぜですか?
 d)第15条(本調査の通知)第11項に「学長は、本調査を実施することを決定したときは、当該事案にか係る研究費等の資金配分機関及び関係省庁に、本調査を行う旨を報告するものとする」とあります。前便貴信では、「本調査」の開始をうたっておりましたので、9月3日時点で、文部科学省に報告はされたのですか?
以上、「?」マークのついた質問について、明確にお答え下さい。(以上)

6 研究協力者の権利回復の進捗

 前述の通り、私たちは5月30日の記者会見において、元大学院生出崎に対して、現在公開中の映画の上映中止を要求しました。出崎には、研究実施者として、研究資料を自身の研究で使用せず、また、他の研究を含む一切の別の用途にも使わない学術倫理上の責任が生じました。しかし、これを、出崎は拒否しました(6月3日の記者会見)。
 次に責任履行義務があるのは、研究責任者(指導教員)です。研究責任者が誰であるかは、本人および上智大学当局の隠蔽により長らく確定的には判明しなかったのですが、東京地裁にて係争中の前記民事訴訟の被告側答弁書(9月17日付け)において、研究責任者(指導教員)が中野晃一であることが、初めて公式に判明しました。私たちは、その研究責任者である中野晃一教授に対して、本日付で出崎の「卒業制作」作品及び現在公開されている映画「主戦場」から、私たちの研究資料を回収し、残余の全てのコピーを破棄するよう要求する「研究参加同意撤回書」を配達証明郵便にて送付します。私たちのこの要求に対して、中野教授が誠実に履行する姿勢を示さなければ、故意による研究倫理違反が確定し、処分の対象となります。
 中野教授が誠実に履行義務を果たさなかった場合は、履行責任は中野晃一教授の所属する研究機関である上智大学に移ります。上智大学は、回収・破棄を機関の行為として誠実に取り組むとともに、回収・破棄の履行義務に意図的に違反した、出崎および中野教授に対し、故意の研究倫理違反として処分を実施しなければなりません。
 上智大学が仮に、この回収・破棄の履行に誠実に取り組まなかった場合、監督官庁(文科省)に責任は移り、監督官庁は指導・省令その他の方法により、同学に対して履行を命じなければなりません。同時に、学術研究機関としての上智大学に対して、研究不正への自浄能力の欠如に関して一定の処分を実施しなければなりません。

【解説】撤回権は上智大学における研究倫理規程に明確に定められています。研究者はインフォームド・コンセントの手続きの一部として、これを研究協力者に伝える義務があります。文例も出ております。その文例に倣って、今回のケースに当てはめて書式を決め、各研究協力者に署名捺印をしていただきました。これには、民事提訴の原告、対上智大交信文書の発信者として参加している、ケント・ギルバート、藤岡信勝、藤木俊一、トニー・マラーノ、山本優美子の5名に加えて、5月30日の共同声明に署名した、加瀬英明、櫻井よしこの両名も加わっています。これで、共同声明に署名した7名全員が撤回書に署名したことになります。
これによって、出崎の修士卒業要件であった卒業制作としてのドキュメンタリー作品は完全に存在根拠を失いました。そして、それに基づいてつくられた――というより、民事訴訟における被告側答弁書によれば、「構成」は「ほぼ同じ」、「同じ作品である」とされている――商業映画も存在根拠を失います。
撤回書は10月1日に5名分、10月8日に2名分を送付したので、9日までには大学側に届いています。その日から起算して7日以内に返答を求めていますから、16日には中野または大学側から何らかの回答があるはずです。以下に、加瀬英明氏の撤回書をサンプルとして掲示します。

上智大学教授中野晃一と元大学院生出崎幹根の「主戦場」研究不正事件と大学当局の対応について(文科大臣への報告)(続き)

5 出崎と中野教授の研究不正

 今回の事件を研究不正の観点から整理すると、次の4点が倫理違反となります。

① 参加同意撤回要求に対して研究資料の破棄を履行しない義務違反
研究資料の社会的公表の中止と回収は、学術倫理上、研究協力者に保障された最重要の権利であり、研究者はそれに応じる絶対的な義務があります。5月30日、私たちが「上映中止」という形でこの要求を突きつけたのに対して、出崎はこれを拒否し、現在も映画の公開を続けています。研究協力者からの研究撤回要請を履行しないという行為は、重大な研究倫理義務違反であり、悪質な研究不正です。私たちは、今後、出崎の学位(修士号)の取り消しを大学に求めます。

② インフォームド・コンセントの手続きを履行しない義務違反
出崎は、私たちの取材において、誠実な研究であれば当然に履行するはずの、インフォームド・コンセントの手続きを全く履行していません。研究計画書の交付、研究同意書の交付および同意書面の提示と保管、同意撤回書の交付、その他インフォームド・コンセントの要件などがことごとくネグレクトされました。それによって、私たちを一方的に攻撃し侮辱する内容の映画を作成する意図が隠蔽され、私たちがその被害を受ける前に研究参加を撤回する機会が失われました。

③ 研究着手要件である倫理審査を受けていない義務違反
もしも、出崎が倫理委員会の事前審査を受けていれば、インフォームド・コンセントの手続きを義務付けられたはずです。もちろん、審査を受けなかったからといって、研究倫理上の義務を免れるものではありませんが、上記の②に挙げた事実に鑑みれば、倫理審査の回避は、実質的な研究不正です。

④ 許諾書面を詐取した研究遂行上の倫理違反
出崎は、私たち研究対象者にインタビュー取材を実施する過程において、研究倫理上必要な「研究参加同意書」を全く提示しない一方、「承諾書」なるものへのサインを執拗に迫っていました。この「承諾書」 なる文面は、現在公開されている商業映画への「出演承諾書」であるとして、私たちの抗議に法的に対抗する口実に使われているものです。
もしも、取材の過程で、卒業制作への「研究参加同意書」と、それとは別に商業映画への「出演承諾書」が研究協力者に提示されていたら、どうだったでしょう。「研究参加同意書」にはとりあえずサインするが、「出演承諾書」に対しては、完成して全編を見てから、改めてサインをするかしないかを決めるとしてサインを保留したはずです。
 他方、「出演承諾書」だけが示された場合はどうでしょう。研究協力者においては、今しがた受けたインタビュー取材は、学術研究への協力であるという頭があります。学術研究は学術倫理の制約下にあり、研究協力者は保護されるという信頼があるため、サインが卒業制作の完成に必要だと言われれば、「研究参加同意書」のようなものとして受け取り、容易にサインしてしまうでしょう。そして、実際に、何人かは、そのままサインさせられたのです。
 そもそも、真面目な研究において、学術研究として作成した映像作品が高評価を博し、配給会社を通じた一般公開を企画するのであれば、その時点で研究協力者に完成した全編を見せて、改めて出演承諾書にサインをもらえばよいことです。そうした手続きを踏まないで、研究調査の過程で研究対象者を法的に拘束しようとする書面を入手しようとすること自体、学術研究に対する信頼を毀損する行為です。ましてや、「研究参加同意書」と錯誤される状況を巧妙に作り出し、のちにそれを盾に法的に対抗しようとするなど、「詐欺」と言われても仕方のないものです。

今回の研究不正は、単なる規定上の手続きの形式的な懈怠ではありません。研究倫理規定の立法趣旨である「研究協力者の権利保護」を侵害することを目的として、規定上の手続きに意図的に違反したのです。本件研究不正は、形式的なものではなく、実質的で本質的なものなのです。
また、以上の研究不正は、直接の実施者は出崎ですが、その最終責任者は中野晃一教授です。中野教授の言動と証拠から、一連の研究不正行為が中野晃一教授の実質的な指導によるものであることは明らかです。

上智大学教授中野晃一と元大学院生出崎幹根の「主戦場」研究不正事件と大学当局の対応について(文科大臣への報告)(続き)

4 インタビューを受けさせるための詐欺的手口

 出崎が私たちに研究協力を求めてアプローチしてきた方法は主にメールによるものでした。アプローチの具体的方法や文面は様々ですが、全てに共通していたのは、「上智大学」の「学術研究」として、協力を依頼してきたことです。出崎が最初にアプローチした山本優美子(上智大学の卒業生)に送ったメールには、インタビューについて次のように書かれていました。

 「大学院生として、私には、インタビューさせて頂く方々を、尊敬と公平さをもって紹介する倫理的義務があります。これは学術研究でもあるため、一定の学術的基準と許容点を満たさなければならず、偏ったジャーナリズム的なものになることはありません」(2016年5月24日)
 「公正性かつ中立性を守りながら、今回のドキュメンタリーを作成し、卒業プロジェクトとして大学に提出する予定です」(同年5月31日)

 もし仮に、一人の映像作家が自身の自主制作映画のためにインタビューを依頼してきたのであれば、私たちは応じていなかったでしょう。映像作家の自主制作映画には、法律以外に何の制約も及びません。他方、出崎の場合には、「学術研究」であるため、研究協力者は学術倫理によって保護されるという期待が存在します。しかも、「上智大学」という権威ある学術機関の信用が、この期待を裏付けています。そのため、私たちは出崎の研究に協力しました。
 しかし、このインタビューのプロセスには、出崎の数々の欺瞞が仕込まれていました。まず、上智大学の校章が大きく描かれた出崎の名刺には、肩書きに「大学院生」とだけしか書かれておらず、所属機関が全く不明です。そのうえ、住所や電話番号には四谷校舎の代表のものだけが記載され、連絡先として意味をなさないものでした。E-mailのアドレスも、XXX.sophia@gmail.comという、大学が正規に発行して学生に割り当てるアドレスを擬装するという手の凝ったものでした。もちろん、大学が正規に発行するアドレスのドメインは、XXX@sophia.ac.jpです。この奇妙な名刺が示しているのは、上智大学の権威によって私たちを信用させたいが、決して、身元につながるような情報は与えたくないという意図と作為です。
 出崎は、「人を対象とする研究」において交付が義務付けられている「研究内容説明書」などの書式を一切見せていません。被害を受けた一人である櫻井よしこに対しては、唯一、「企画書」なる文書を提出していますが、そこにも「研究内容説明書」において明示が義務付けられている「研究責任者」「研究への参加と撤回」「予測されるリスク」「研究成果の公表」などの重要事項が省かれています。
そこまでして出崎が隠蔽したかった最大の事項は、研究責任者(指導教員)の名前です。その指導教員中野晃一教授は、従前より私たちを敵対視する言動を繰り返していました。映画「主戦場」においても、出演者の中で最長の時間を使って私たちを一方的に批判し、被害に遭った5名を「この顔見てるのは苦痛だなっていう人たち」などと、公の場で露骨に嫌悪の情を示してののしっている人物なのです。さらに、「今になって騙されたなんだって言ってるけど、全部自分がしゃべっている話なんですね」(4月19日、参議院議員会館における講演)などと言い、映画に使われているのが「自分がしゃべっている話」でありさえすれば、どのように騙しても、どのように不当なレッテルを貼って攻撃しても何ら問題ないという論理を展開する、研究倫理感覚が麻痺した人物なのです。
こうして出崎は、研究計画の全容について事前に十分かつ誠実に説明する義務を意図的に怠ることで、私たちから出崎の攻撃意図を見抜く機会を奪い、私たちを攻撃する映画の完成に漕ぎつけたのです。

【説明】下に掲載する文書は、出崎が櫻井よしこに送ったもので、出崎が「企画書」とよんでいたものである。これについていくつかのことを指摘しておきたい。

① 上智大学で定められた書式は「研究内容説明書」である。それは出さずに、この「企画書」を出した。

② しかし、本来、「研究内容説明書」では明示が義務付けられている「研究責任者」「研究への参加と撤回」(研究協力者は参加を撤回出来ることの説明)「予測されるリスク」「研究成果の公表」などの重要事項が、この「企画書」ではスッポリと欠けている。

③ 最も隠蔽しておきたかったのは、「研究責任者」の名前であろう。ここには指導教員の名前を書くので、中野晃一と書かなければならないが、そのとたんにこの映画の陰謀がバレてしまう。だから、「研究内容説明書」は無視したのである。このことも、当然、指導教員(中野)と打ち合わせズミであろう。

④ 櫻井には「ケント・ギルバートの紹介」と言っている。保守系の論者の中の人的関係に通じていなければできないことだ。

⑤ 他のメンバーには、テーマを確定的に「歴史議論の国際化」としていたのだが、この企画書では、(仮)という部分が付け加わっている。この企画書の日付けは12月2日だが、この頃には「主戦場」というタイトルが浮上していたのかも知れない。

⑥ さらに注目すべきことは、他のメンバーにはなかった「秦桃子(インタビュワー)」という記載があることだ。この人は公式プログラムに「私は、ピンチヒッターという形で、当初から携わっていたが多忙のためにプロジェクトから抜けた日本人スタッフとの入れ替わりで入った」と言っている(22ページ)。つまり、出崎は中野がオーガナイズした多数の外部スタッフに囲まれて「卒業制作」をしていたわけで、本当に出崎の作品と言えるのかすら疑問である。当初から、誰はばかることなく、上智はこの反日映画の製作所と化していたのである! 秦桃子についてはまだまだ書くべきことがあるが、きょうはこのくらいにしよう。

⑦ 「概要」のところでは、「我々が慰安婦問題についての研究を進める過程で、日本の保守派がkの問題に関して説得力のある議論を展開していることが明らかになった」などと書いている。インタビューを受けさせるための「くすぐり」である。

上智大学教授中野晃一と元大学院生出崎幹根の「主戦場」研究不正事件と大学当局の対応について(文科大臣への報告)(続き)

3 出崎の「卒業制作」研究の実施経過
 
今回の上智大学を舞台とした研究不正事件を時系列的にまとめると次のようになります。

① 大学院生出崎幹根は、指導教員中野晃一教授の指導の下に、自身の学位審査要件である学術研究(卒業制作)として、フィールド研究における聞き取り調査映像によって構成される映像作品を制作する研究計画を立てた。(2016年4月頃と推定される)

② 上智大学では、フィールド研究において聞き取り調査を実施する場合、その研究によって研究対象者に苦痛を与えるなどの利益侵害が起きることを未然に防ぐために、「人を対象とする研究」の倫理委員会の審査を事前に受けることを研究着手条件として定めている。ところが、本研究は、その手続きを完全に無視して研究に着手した。

③ 大学院生出崎は、2016年5月から翌年2月までの期間に、研究対象者8名(本報告発出主体の上記5名に加えて、加瀬英明、櫻井よしこ、杉田水脈の3名)に対してメールその他の方法で個別に研究協力を依頼し、8名のインタビュー映像を研究資料として入手した。

④ しかし、インタビュー調査は、「人を対象とする研究」の実施要件として上智大学が定める要件、即ち、研究対象者への研究計画書の交付、研究同意書書式の交付、同意書面の保管、同意撤回書式の交付、その他インフォームド・コンセントの手続きをことごとく無視して実施された。

⑤ その一方で、大学院生出崎は、インタビュー調査実施時に、学術研究への「研究参加同意書」であるかのように擬装して「承諾書」「合意書」のサインを詐取した。これは、被害者からの予想される抗議に対して法的に対抗するための準備であり、それを後に、商業的に公開された映画への「出演承諾書」であると強弁するための行動であった。

⑥ 指導教員中野晃一教授は、大学院生出崎に対して、上記のかくれた目的をもった「承諾書」の取得を、出崎の学位審査要件である学術研究課題作成の着手要件として課しており、商業映画への映像の転用は指導教員中野教授と示し合わせて行われたものであった。この点について具体的に言えば、承諾書へのサインを拒否した藤岡へのメールで、出崎は「私たちの指導教官(ママ)と話しましたところ、(中略)やはり承諾書へのサインなしには、ドキュメンタリーの製作へ着手することが難しいと言われました」(出崎から藤岡へ、2016年9月12日)と書いている。

⑦ 大学院生出崎は、完成した学術研究課題(卒業制作)を2018年1月10日、上智大学大学院に提出し修士の学位を得たが、卒業制作についても学位取得についても、何ら研究協力者8名には連絡しなかった。

⑧ その一方で、学術研究を通して入手した研究対象者らの研究資料(インタビュー映像)を研究対象者に無断で用いて映画を作成し、2018年10月釜山での映画祭において一般公開し、2019年4月からは配給会社を通して商業映画「主戦場」として日本で一般公開した。

⑨ 商業映画の一般公開後、8名の研究対象者(研究協力者)は、初めて出崎の学術研究の意図と性格を伝え聞くことになり、その内容が、8名の研究対象者(研究協力者)を一方的に攻撃し、反論を許さず、しかも人格的に侮辱するものであることを認知するに至った。

⑩ 7名の研究対象者(研究協力者)らは、5月30日、記者会見を開き、公開されている映画の上映中止を出崎に対して要求した。しかし、出崎は映画配給会社・東風とともに、6月3日、対抗して記者会見し、私たちの要求を拒否した。そこで、被害者5名は、6月19日、出崎と東風を相手取り、上映中止等を求めて東京地裁に民事訴訟を起こした(令和元年(ワ)第16040号)。

★今回は、「インフォームド・コンセント」についてです。

上智大学教授中野晃一と元大学院生出崎幹根の「主戦場」研究不正事件と大学当局の対応について(文科大臣への報告)(続き)

2 研究協力者の安全を保障するインフォームド・コンセント

 学術研究において研究対象者の安全を保障するために設けられているのが、インフォームド・コンセントと呼ばれる次のような権利義務確認の手続きです。

第一に、研究対象者には、研究計画の全容について事前に十分に説明を受ける権利があり、研究者には、誠実に説明する義務があります。

第二に、研究者は、研究対象者の研究参加への同意を取り付けた上で、それを書面(研究参加同意書)によって表明してもらう必要があります。

第三に、最も重要な実体的権利義務として、研究対象者には、研究参加への同意をいつでも撤回する権利(撤回権)の行使が認められています。そして、その権利の存在を、研究者は研究開始の前に、研究対象者に明確に伝える義務があります。撤回権行使の具体的効果は、当該研究調査によって入手した研究対象者本人に関わる全ての研究資料を、当該研究で使用させず、また、他の研究を含む一切の別の用途にも使わせないことです。理由の如何に関わらず、本人が研究参加への同意を撤回した時点で、本人から取得した研究資料を回収・破棄しなければならない研究倫理上の履行義務が研究者に発生するのです。

上記3つの権利義務の履行を研究者が意図的に懈怠した場合、「人を対象とする研究」倫理上の重大な研究不正があったことになります。上智大学を含む各大学は、こうした研究不正が起こらないように内規を定め防止に努めています。ただ、個々の大学でどの程度の内規が整備されているかに関わりなく、上記の権利義務関係が成立することは学術共同体の共通了解事項であり、研究者なら誰もがわきまえている自明の規範です。

【資料】10月1日の文科省の記者会見で、こういう席に必ず出て来る朝日新聞の北野記者は、上智大学の規定の根拠がないかのように、執拗に質問してきました。自分で関心がなく、一度も調べたこともないのでしょう。上智大学は、規定は整備されているほうです。だからこそ、中野・出崎はそれを無視しなければ、保守派言論人を騙して映像を撮ることができなかったのです。以下に、上智大学のインフォームド・コンセントの規定を示します。

 ★今回から、10月1日の文科省報告文書を連載します。タイトルは「上智大学中野晃一と元大学院生出崎幹根の『主戦場』研究不正事件と大学当局の対応について」です。適宜、関連資料や事実を補足します。

文部科学大臣 萩生田光一 殿         令和元年(2019年)10月1日

ケント・ギルバート
藤岡信勝
藤木俊一
トニー・マラーノ
山本優美子

上智大学教授中野晃一と元大学院生出崎幹根の「主戦場」
研究不正事件と大学当局の対応について(報告)

1 研究倫理の存在理由

 上智大学の中野晃一教授とその指導下の元大学院生・出崎幹根(日系二世の米国人)が犯した研究不正事件と大学当局の不誠実な対応について、被害者の立場からご報告いたします。はじめに、研究倫理の存在理由について基本的な位置づけを確認いたします。 

 一般社会では、法に違反しなければ、ほとんどのことが許容されます。しかし、学術研究の世界では、法を順守するだけではなく、研究倫理規範にも従わなければなりません。そのような倫理規範が独自に存在するのはなぜかというと、それなしには学術研究そのものが成り立たなくなるからです。

 研究倫理規範の一つは、「捏造・改竄・剽窃」をしないという規範です。即ち、「嘘をついてはならない」というものです。学術研究において「嘘をつく」ことがありうるとしたら、真理探究の手段としての学術研究はその存在価値を失います。

もう一つの研究倫理規範は、「研究対象者に被害を与えてはならない」という規範です。人の行動や思考その他に関するデータを研究調査の対象とする全ての研究は、研究対象者からの善意の協力がなければ成り立たないものです。もしも、この「研究対象者に被害を与えてはならない」という研究倫理規範が守られなければ、善意で研究に協力する者は被害を受けることも覚悟しなければならない、ということになります。そうなったら、研究協力者は誰もいなくなり、研究基盤が崩壊します。

研究倫理規範に反する研究不正が発覚した場合、研究機関(大学等)は、研究不正を厳格に調べ上げ、再発しないように処分を下さなければなりません。そこに故意が認められた場合は、違反者は学術の世界からの追放をも免れません。もしも、こうした研究不正に厳正な対処がとられなかったとすれば、学術研究が「嘘をつき」「研究対象者を攻撃する」こともあり得るということになります。そうすると、学術研究は成り立たなくなります。ひとたび許されると、別の研究において繰り返されないという保障は何もなくなるからです。

研究不正は、学術共同体全体の信用を左右するものです。信用修復に一次的な責任を負うのは研究機関ですが、個々の研究機関は学術共同体からその調査と処分を委任されているという関係にあります。もしも、当該研究機関に再発防止の自浄作用が働かなかったならば、次に学術共同体全体の付託を受けている監督官庁が、研究不正の解明とともに、研究機関についてもその適格性を問わなければならなくなります。そうして、当該研究不正に関与した研究者と、その是正に失敗した学術機関の両方に処分を実施して、学術研究への信用を回復することになります。

監督官庁がこの信用修復に失敗したとすれば、その国の学術研究は終焉を迎えます。

            ◇

【補足】ここで述べられている「捏造・改竄・盗作」の事例として、上智大学で最近起こった修士論文の取り消し・修士号剥奪の事例を大学の広報記事から引用します。

お知らせ

2019.08.21

修士論文の不正行為について

このたび、2018年3月に本学大学院総合人間科学研究科博士前期課程を修了し、「修士(教育学)」の学位を授与された大学院生の提出した修士論文に不正の疑いがあるとの通報があり、調査を実施いたしました。

当該調査の結果、当該学生による盗用・剽窃及び捏造が認定されました。本件は、著しく研究倫理に反するものであるとともに、本学の学位及び教育研究活動の信頼性を損なうおそれのあるものです。

以上のことを受け、本学は、当該学生に対して、本学大学院学則及び学位規程に基づき「修士(教育学)」の学位授与を取り消し、学位記を返還させました。

本学では、すでにオンライン講座や研修会等、研究倫理に関する教育活動を実施してきているところですが、今後も倫理教育を継続的に実施するとともに、このような不正行為が発生しないよう、さらに再発防止に努めるものとします。


2019年8月21日 
上智大学長 曄道 佳明

 【コメント】同じ修士課程の修了研究の論文について、このような処分を上智大学はおこなっていました。2018年3月と言えば、出崎が終了したのと同期です。こちらの不正事件はこのように処理しているのに、同期卒業生の出崎に対する告発は、告発自体を2ヶ月間も、当方から内容証明郵便を送りつけるまで、大学当局は握りつぶし続けたのです。このダブルスタンダードはなぜ起こったのでしょうか。言うまでもありません。それは、出崎と共同正犯関係にある指導教授・中野晃一を大学当局が守るためです。ともかく、上智大学はまず、上記の院生と同じように、出崎の修士論文の取り消しと修士号の撤回、学位記の返還をさせなければなりません。

★中野-出崎の研究不正事件について、10月1日、文科省に報告し、記者会見を行いました。今回からシリーズで詳報します。

■出崎が持ち歩いた名刺が語る詐欺師のテクニック【拡散希望】

まず、下の名刺を20秒くらいジッとご覧下さい。何か気付くことはありませんか?

では、これから謎解きです。

  1. 上智大学の校章が大きく描かれています。いかにも「上智大学」を印象づけようとしています。
  2. 肩書きには「大学院生」とだけしか書かれておらず、大学院の研究科やコースなどの所属が全く不明です。
  3. そのうえ、住所には四谷校舎の代表のものだけが記載され、連絡先として意味をなさないものでした。
  4. E-mailのアドレスも、XXX.sophia@gmail.comという、大学が正規に発行して学生に割り当てるアドレスを擬装するという手のこんだものでした。
  5. もちろん、大学が正規に発行するアドレスのドメインは、XXX@sophia.ac.jpです。

あなたは、いくつ、気付きましたか。

この奇妙な名刺が示しているのは、上智大学の権威によって私たちを信用させたいが、決して、身元につながるような情報は与えたくない、という鞏固な意図と作為です。

出崎は、他に2人の大学院生を連れ歩いていました。彼らが持ち歩いた名刺を含む3人の名刺を裏側の英語の表記も含めて一挙に並べると、上のようになります。 出崎は2人の同期生をさそって自分の「卒業制作」に巻き込んだ、という解釈は間違いです。3人は、詐欺の確信犯からなる共犯グループと断定して差し支えありません。

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