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「主戦場」指導教官・中野晃一上智大学教授の責任(5)

月刊Hanada2019年9月号掲載

新しい歴史教科書をつくる会副会長
藤岡信勝

不誠実な上智大学

  上智大学には「学術研究倫理ガイドライン」(平成二十二年制定)がある。その前文では、「イエズス会の設立による本学は、カトリシズムの精神に基づき、学術の中心として真理を探究し、文化の発展と人類の福祉に寄与する研究活動を行ってきた」と宣言し、「研究活動には高い倫理性が求められている」としている。

 対象となる「研究者」には、研究活動に従事する限りにおいて学生も含まれる(2項)。また、「研究を指導する立場にある者は、不正行為が行われないよう、指揮下にある研究活動及び研究者等の管理、配慮を行う」(4項)としている。

 「上智大学における研究活動上の不正行為の防止に関するガイドライン」(平成二十八年制定)では、告発窓口に関する規定があり、「研究活動上の不正行為に関する告発は、監査室で受け付けるものとする」となっている。

 そこで、藤岡は山本優美子の協力のもとに、六月二十一日、告発窓口の置かれた監査室に電話をし、担当者の男性に約三十分にわたって事情を説明した。当方の希望は、学長または研究倫理担当の副学長に面会し、事情を訴える機会を得るためのアポを取ることだった。それは、大学が正確な事情を知って主体的に問題を処理することを期待しての行動だった。

 しかし、担当者は、「不在で連絡がとれない」→「連絡がついたが、検討中で返事ができない」→「面会希望の件を取り上げるかどうかも含めて検討中である」→「いつまでに回答出来るか約束はできない」といった調子で何日も費やし、大学トップの誠意ある態度がうかがわれなかった。この上は、別の方法で大学としての責任を問うしかない。

いかなる責任を取るのか

  ここで、大学がこの種の出来事についていかなる責任を取るべきかについて考えるために、「首都大学ユーチューブ事件」を取り上げてみよう。

 平成二十二年(二○一○年)六月、首都大学東京システムデザイン学部インダストリアルアートコースに所属する四年生の二人の男子学生は、卒業制作として動画作品の製作に携わっていた。

 彼らは、かねてからニセの街頭募金活動をやったり、商店に飛び込んでアポなしでインタビューを行う様子などを、ユーチューブに投稿していた。いわゆるユーチューバーだったわけだ。

 さて、その卒業制作だが、彼らは「ドブスを守る会」と称して道行く女性たちにインタビューを行い、その容姿について無礼な論評をし、その女性の反応の一部始終をビデオカメラに収めるということをやっていた。当時の新聞から、その様子を描写した記事を引用する。

  〈「写真撮らせてもらえますか?」

 「・・・なんか雑誌ですか?」

 「(撮影が終わり)ありがとうございました。タイトルはドブスを守る会です」

 「・・・写真、消してもらっていいですか? 自分のことブスだと思ってないし、そんなふうに使うんだったら最初から言うべきだと思います」

 「ありがとうございます。やっと、こういった反応が撮れました」〉(「卑劣な『ドブス』動画の中身」夕刊フジ平成二十二年六月十九日付けに掲載)

 被害に遭った女性は、判明しているだけで六人で、そのうち少なくとも二人の女性の動画がユーチューブに投稿されていた。学生らは、この不謹慎な会をつくった動機について、動画の冒頭で「ドブスが絶滅の危機に瀕している。わが国から消えゆくドブスの姿を収めた写真集を作り始めた」と説明していた。

 これに激怒した一部のネットユーザーは学生らの素性をばらしたが、学生らは動画を削除した上でミクシーなど会員制サイトを退会した。そして、個人名や大学名が書き込まれたネット掲示板の管理人には、自分たちの行為を棚にあげて「著しく個人の利益を損なう」などの理由をあげ、削除申請までしていた。

 この行為について、前掲夕刊フジには、学生らの行為が刑法上の名誉毀損罪または侮辱罪に該当し、民事訴訟でも肖像権や人格権侵害などで慰謝料を請求できる、との弁護士のコメントが載っている。

 抗議が殺到した首都大学東京は素早く対応し、「大学としては女性の人権を無視した行為を重くとらえ、全てが明らかになった時点で対応を決めます」との見解を発表した。

  結果はどうなったか。

 六月二十四日、動画の制作に携わった二人の学生には退学処分が言い渡された。処分の理由は、①映像作品を完成するという名の下に、被写体となった方々に対し公然と人権侵害をしたこと②映像を作品として公開することにより、被写体となった方々の精神的苦痛を増大させたこと③首都大学東京の社会的信用を失墜させたこと、の三点であった。

 また、教員に対しても、七月六日、動画制作に携わった学生の指導教員に対しては諭旨解雇が言い渡された。処分の理由は、①平成二十二年六月に、自らのゼミにおいて、先般退学処分とした学生が卒業制作に関連して作成した映像を視聴した際、その内容の不適切さを認識し、当該学生が企図したインターネット上の動画サイトへの投稿については制止の指示をしたものの、製作の継続については容認するかのような発言を行うなど、その教育指導が不十分であった。その結果、本学の社会的信用の著しい失墜など、重大な事態を招いた②今回の不適切な映像についての問題発覚後、上記の経緯と異なる虚偽の報告を行った、の二点であった。   「首都大学ユーチューブ事件」は、藤岡らが被害を受けた今回の事件との細部に至るまでのあまりの類似に一驚する。上智大学はその名誉を問われ、出崎の指導教官で、出崎のインタビューを指導しただけでなく、彼の商業映画の宣伝まで買って出ていた中野晃一は、その責任を問われているのである。

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